熊本江津湖の自然を研究し守って行く江津湖研究会
江津湖生態系調査
生態系は生物システムと無機システムからなり、人為的環境に大きな影響をあたえています。
江津湖で生態系調査のため、328種類を確認し、15年前(330種類)と比較し内容を確認いたしました。
その結果、数の差はないですが、15年前に生息していた危急植物「ミゾコウジュ」が確認されないことや枕水植物群落のうち、「ヒラモ」を含む植生が15年前は41地点であったのが、今回は4地点と激減しておりました。
これに反し、特定外来生物である「ボタンウキクサ」が江津湖で発見されるなど明らかに江津湖の生態系が崩れていることがわかりました。
江津湖を保全するには、生態系のしくみや外来種と在来種、固有種との関係等について、広く認識していたいだくために広く活動をする必要があると考えております。
湧水湖・江津湖は、生態系・無機システムにおける、特に水圏において格段の優位性を有しております。そのため、江戸時代から400年以上を経た現代においても、他の大都市にはみられない非常に自然度の高い場を県民、市民に与えております。
この希有な天恵を後世に伝えることは、今を生きる人々の責務であると感じております。
こういった調査・報告が少しでも役立つことであれば望外の喜びです。
スイゼンジノリ保全活動
地球誕生から46億年。スイゼンジノリは、現在の地球環境を作り上げた生命体の仲間です。
約30億年前、原始地球のみで発生した海洋性ラン藻(マリン・シアノバクテリア)が、酸素光合成を営み、地球上に酸素をもたらしました。この酸素と宇宙からの強烈な紫外線により、オゾン層がかくりつされ、生命は水(海)中から陸地へと生活する場を広げることができました。それが約4億年前といわれ、その後、恐竜の時代を経て、現在に至る進化を成し遂げています。
スイゼンジノリはまさに、この進化をもたらした立役者の一つである生物・ラン藻の仲間です。
ラン藻は、熱帯の海から氷海、砂漠に至るまで地球上に広く分布しており、その数は約1,500種にのぼります。
スイゼンジノリはその仲間ですが、陸水・淡水の中でのみ生活しています。したがって、その期限は地球上に淡水環境が成立した後になると考えられ、ラン藻の中では比較的新しい種類といえます。
スイゼンジノリは学術的に世に紹介される以前から、細川藩(熊本)、秋月藩(福岡)で高級郷土料理の素材として大切に保護・育成されていました。また、1924(大正13)年には、上江津湖の一部である熊本市出水神社の境内がスイゼンジノリの発生地として天然記念物に指定されました。しかし、1953(昭和28)年の熊本・白川大水害により天然記念物の指定地を含めたスイゼンジノリの発生地は大量のヨナ(火山灰)に覆われてしまい、スイゼンジノリは絶滅したと考えられました。
1966(昭和41)年 熊本市教育委員会の調査により、絶滅したと考えられていたスイゼンジノリの生存が確認でき、多くのボランティア団体の活動によりその数を年々重ねてきました。
その活動を絶やすことのないよう、江津湖研究会ではスイゼンジノリの保存とその活用のため研究を行っております。
熊本県水環境会議
江津湖研究会では、故・清水正元先生の提唱により、熊本県水環境会議を約30年前より行っております。
熊本県水環境会議では「熊本の水環境を守り、育てる」という目標に向かって進んでおります。
熊本市を中心とした「熊本地域」は人口約97万人の生活用水をほぼ100%地下水で賄っている「日本一の地下水都市」です。
その天恵は、約30数万年前から約8万年前に4回の大噴火を繰り返した阿蘇火山によって蓄積した透水性の良い火山灰層などが阿蘇地域を形作り、有明海川からの湿った空気の流入によって雨が振りやすいことで保たれております。
熊本の水がめ・阿蘇に降った雨は地表水としてもしくは地下に浸透し、再び湧水として現れ、その水が阿蘇地域の田畑の源となっております。また、その田んぼの地下に浸透した水は地下水バイパスをとおり水前寺・江津湖・浮島などの湧水群となって地下水都市を支えております。
しかし、近年、農業地帯における水田面積がピーク時に比べ半減し、湧水量の減少や水質の悪化など大きな陰りが見えはじめております。
江津湖を通じて、水を守り、その貴重さを認知していただくことにより「日本一の地下水都市」が守れるよう熊本県水環境会議ではさまざな活動を行っていきます。